邪頭(じゃず)的日記
2002年11月


11月30日(土)

午前中は化学熱力学の講義。 実は昨日のレフリーコメントのせいで朝から気分がローだったが、 講義で否応なしに人前で話さなければならなかったお陰で、 気持ちも少し持ち直してきた。 論文の対応の仕方については、およそ腹をくくる。


11月29日(金)

午前中は大学院の講義。 学生の授業態度を見ていると、土曜日の講義に出席している学部 三年生よりも今日の大学院生の方が真剣味が足りない。 お粗末な話だ。

投稿中の論文の二回目のレフリーコメントが送られてくる。 一回の修正で決着がつかなかったので、精神的ダメージを受ける。 レフリーはずばりと本質的な所を突いてくる。 ただし、まだリジェクトはされていないのが不幸中の幸いか。 あれこれと悩む。


11月28日(木)

午後から生産研でイリノイ大のグラニック氏のセミナーに参加。 多数の知人とも遭遇。 小平邦彦著「ボクは算数しか出来なかった」(岩波現代文庫)終了。 日本人物理学者との交流が意外で面白かった。 小平氏の他の著作も読んでみたくなったので、図書館で 「怠け数学者の記」(岩波現代文庫)を借りてくる。


11月27日(水)

夕方に我が家の前のアパートの一室から出火したらしく、 消防車や救急車などが20台近く集まってきて、辺りは 騒然とした雰囲気になった。

幸い大きな被害が出る前に火は消し止められたようだ。 しばらくその様子を私の住むアパートの廊下から眺めて いたが、その時に「対岸の火事とはまさにこのこと」 などと考えていたのはやや不謹慎だったか。

他人の論文を読んだり、自分の論文を書いたり。


11月26日(火)

午前中は荷電脂質に関する古い実験の論文に目を通す。 最近の理論計算の定量的裏付けができそう。 昔の人は偉かったと思う。

午後は教室協議会。 その後、論文書きを少し進める。 夜になって急に鼻水が出始めて、風邪をひそうになったので、 ビールを飲んで早めに寝る。

前野昌弘著「微粒子から探る物性七変化」(講談社ブルーバックス) を購入。 コロイド界面科学の啓蒙書だが、タイトルがやや奇妙。


11月25日(月)

一日中、物書きの日。

小平邦彦の「ボクは算数しか出来なかった」が面白くて すいすいと読み進める。 昨日も書いたが、一高(現在の東大教養)に一番の成績で合格 した人が「算数しか出来なかった」というのは、ユーモアを 通り越してやや嫌味に聞こえる。 と、ついひがみたくもなるほどの超エリート人生。


11月24日(日)

久しぶりにビデオを借りて映画を見た。 小津安二郎の1962年の「秋刀魚の味」。 恥ずかしながら、小津作品を見るのはこれが始めてである。

良かった。 最近イライラすることが多いので、ほっと一息つけた。 昔の日本の生活スタイルはきれいだ。 日本語も美しい。

小平邦彦の「ボクは算数しか出来なかった」(岩波現代文庫) を読み始める。 書名は嘘だと思う。


11月23日(土)

2週間分の収穫物。

山本剛は全部集めることにしている。 ちょっと音痴が売りのマリーナ・ショーは、だいぶ「おばさん声」 になってしまった。 ビリー・コブハムはケニー・バロンとロン・カーターのトリオ なので買い。 「ドラムのリーダー作に名盤はなし」を改めて証明してくれる ワッツ君の最近の作品。

家のパソコンの調子が悪いので、スキャンディスクとデフラグ をやった。 デフラグの様子を詳細表示させていると、私の性に合うのか、 なぜか非常に心地良く、なかり長い間意味もなく画面を見つめ ていた。 私の心は癒しを求めているのだろうか。


11月22日(金)

今日から大学院生のための「化学特論」という講義がスタート。 全体としては分子間力について話す予定で、今日は物質の内部構造が できる理由を説明した。

構造ができる例として「鴨川等間隔の法則」に触れたら、後で学生から 「アベックという言葉は死語で、今はカップルというべきだ」と叱られる。 私の国語辞典にはどちらも載っているし、昔でも「フィーリング・カップル 5対5」のように使っていた。 アベックは本当に死語だろうか。

午後は来年度の時間割編成などでばたばた。 論文も少し。


11月21日(木)

横浜市立大での集中講義二回目で金沢八景へGO。 車中で筒井先生の「関節話法」、「傾いた世界」。

午前中の講義を終えたところで、今日から出席し始めた見知らぬ学生が 私の所にやってきて、「コロイドの非平衡現象を講義で扱うのか」 などと癖のある質問をしてくる。 さらに「先生は邪頭が好きなんですよね」とか「先生は邪頭ドラマー なんですか」などと、とんでもないことを尋ねてきた。 さらに自分は邪頭ピアノが好きだという。

よく話しをしてみると、大月研の院生であることがわかった。 もちろん私の日記を読んでくれているのでこういうことになるのだが、 初対面同士の会話としてはやはり異常と言わざるを得ないだろう。 と言いつつ、私も内心は嬉しいわけで、昼食を一緒に食べながら 色々と楽しい会話をした。 もちろん「邪頭ドラマーですか」という質問には「いいえ、研究者です」 と答えた。

本日は東神奈川で横浜線に乗り換えることに気を付けて、19時過ぎに 無事南大沢に帰還。 次回は12月5日。


11月20日(水)

論文書き。 ねちねちモード。

サー・ローランド・ハナの訃報を知る。 私の愛聴盤は

など。演奏を見ておかなかったのが悔やまれる。 ちなみに後者のCDジャケットには、ベースのジョージ・ムラーツにサインをしてもらったことがある。
11月19日(火)

午前中に少し論文書き。 NIHのパルシジアンは偉い。

午後から知人が来訪。 夜まで果てしなく議論ができて、充実した時間が過ごせた。 自分が枯渇相互作用を理解していないことを痛感。 夕食にとんかつを食べ過ぎて胃がもたれる。


11月18日(月)

日記には書けないまずいことあり。 しばらく引きずりそう。


11月17日(日)

朝の8時半から研究会。 どの話も面白かった。

16時に終わって一路東京へ。 「こだま」と「のぞみ」との接続が悪くて、岡山で1時間以上 足止めされたのが痛かった。 23時半に帰宅。 研究会の時間より移動の時間の方が長かった。

そのお陰で久しぶりに読書ができた。 筒井先生の新しい短篇集で「老境のターザン」、「こぶ天才」、 「ヤマザキ」、「喪失の日」、「平行世界」を読み直す。 「喪失の日」は何度読んでも思わず吹き出してしまうほどの 圧倒的な面白さ。


11月16日(土)

午前中の化学熱力学の講義を終えて、 ダッシュで昼飯を食べ、新幹線で広島へ。

車中で先日買った「大学 知の工場」(日経産業新聞編)にざっと目を通す。 IT、ナノテク、バイオ、産学連携、ベンチャー、、、、。 大学がこんなに無節操になってしまっては、後で必ず取り返しの つかないことになる。

研究会の始まりには遅れてしまったが、夕食会には間に合って、 おいしい料理をいただいた。 物性研究の編集長には謝ってお許しをいただく。


11月15日(金)

一日、論文を書いていたというのは嘘ではないが、 文章に行き詰っては他のウェッブページを覗いたりしていたので、 どれほど集中していたかは怪しい。 わずかに前進。


11月14日(木)

やばい、やばい。 物性研究の編集部から催促のメイルがくる。 例の「かき氷騒動」の原稿だ。 実は最近進んでいないのが気になっていた矢先のことだ。

なおやばいのは、明後日に研究会で物性研究の編集長と会うこと。 叱られるだろうな。 ちなみに全く書いていないわけではなく、 今ところのタイトルは「かき氷騒動 −甘くない砂糖水の話−」 である。


11月13日(水)

生協で「大学 知の工場」(日経産業新聞編)を立ち読みして いたら、なんとなく面白そうっだたので購入してみた。 タイトルのセンスはともかくとして、最近、大学を取り巻く 状況があまりにも奇々怪々としているので、こういう本でも 読んでみようという気になるのである。


11月12日(火)

丸善から出版される「油化学辞典」の(ごく)一部を執筆 することになっている。 そろそろ取りかからないといけないので、今日あたり から始めようと思っていた。 しかし朝から体調が悪く、思考もまとまらない。 眠くてまともな文章が書ける状態ではない。 ということで、先延ばしにする。

若い学生から、「コロイドの物理学」に関する質問の メイルを受け取る。 嬉しいことである。


11月11日(月)

午前中は研究室のセミナー。 午後は講義レポートの採点と論文の閲読。 夜は院生のレポートに目を通す。

DVDの「リージョン番号」の概念が今だによく理解できない。 ずっと以前に買った"Nancy Wilson at Carnegie Hall"の輸入DVDは、 我が家のプレイヤーで再生不能だったのだが、今日再び何度か試して いたら思いがけず再生できた。 そもそも輸入DVDにはリージョン番号が書かれていない。 不可解さが残りつつも、ナンシー・ウイルソンの唄う "Guess Who I Saw You Today"を見ることができて満足。


11月10日(日)

壊れたCDプレイヤーを修理に出そうと思ってLAOXの窓口に 持って行ったら、店員がその場で蓋を開けてひっかかっていた レイ・ブラウンのCDを取り出してくれた。 (私のCDプレイヤーは5連奏式という変わったタイプである。) 無料ですべて解決。 これだけのことで、一日中気分良く過ごすことができた。


11月9日(土)

午前中は化学熱力学の講義。 ユニークな思考回路をもつ学生がいる。 午後から実家を訪問。

今週の獲物。

前者はレイ・ブラウンの最終録音。 後者はマイナーレーベルだが、ドラムがビクター・ルイスなので 憂いなし。

ところが自宅のCDプレイヤーが壊れて気分はロー。 しかも買ったばかりのレイ・ブラウンのCDが取り出せなくなって しまったのは泣きっ面に蜂。


11月8日(金)

夜、研究室のメンバーで飲みにいく。 と言っても今日は出席率が非常に低かった。 12時近くまで延々と研究室のあり方について議論する。

若い衆は深夜の2時まで飲んで、それから始発まで大学で 研究をしていたらしい。 そういう研究室なら問題ないのでは?


11月7日(木)

集中講義のために、京王線、横浜線、京急線を乗り継いで、 金沢八景の横浜市立大へ。 車中で筒井先生の「急流」、「問題外科」を読んでいたのは やや不謹慎だったかしら。

横浜市立大の「総合理学研究科」はユニークな大学院である。 従来の"discipline"という概念を排して、 学生には物理、化学、生物、数学のすべてを広く習得させる というのが理念である。 そのため、受講生は物理と化学の研究室の大学院生が半々だった。 次回は11月21日。

帰りの横浜からの京浜東北線で、間違えて川崎まで乗って しまった以外は、特に大きな問題はなし。 南武線を使って文字通り軌道修正。 車中で「最後の喫煙者」。


11月6日(水)

明日は横浜市立大での集中講義の一日目なので、講義ノートなど の準備や整理をしておく。 先週買ったばかりの小ムラマサ君を持参するのが実は楽しみである。

ついでに液晶プロジェクタのテストしたらうまく表示されないので 一瞬青ざめたが、よく見たらパソコンとプロジェクタの間の コードが全然つながっていなかった。 Graceで論文用のグラフをいくつか仕上げる。 Xmgrの発展版であるこのソフトは完成度が高くて満足。


11月5日(火)

久しぶりに研究室の人と会って、たくさん議論をした。 化学熱力学の受講生が、"Molecular Biology of the Cell" のCD-ROMを持ってきてくれた。 講義などでは自由に使ってよいらしい。 この場で感謝。

とある凄い方が、アンデルマンの 日本印象記を読んで下さったようだ。 その方がこのURLにたどり着かれたことにややびっくりしたが、 やはりこういう形で公開して良かったと思う。

大学の近くに引っ越してから通勤時間がなくなり、そのせいで めっきり読書量が減ってしまった。


11月4日(月)

三連休はちとたるい。 天気が良かったので、高尾山までドライブ。 予想はしていたものの、あまりの人の多さにびっくりする。 帰りのケーブルカーに乗れなくなるのが心配になり、 そそくさと引き上げる。

山頂の薬王院で見かけた「つもり違い10箇条」がちょっと 面白かったので、そのまま引用。


11月3日(日)

娘は大学祭がかなり気に入ったようで、今日もまた行きたい と言う。 二日も続けてどうかと思ったが、よく考えてみれば、 ピューロランドやディズニーランドに連れて行くよりははるかに 安上がりだし、こちらの気分も悪くならないですむので(昨年の この時期の日記を参照)、そうすることにした。 お金が浮いた分、晩には寿司を食べさせてやることにした (ただし回転)。

筒井先生が紫綬褒章を受賞。 新潮文庫から一度に四冊も出版された理由がわかった。 しかし、だいたいにおいて筒井信奉者はひねくれているから、 先生の作品に表の光が当ることを素直に喜べないのでは なかろうか。


11月2日(土)

家族で大学祭を見に行く。 歩いて三分。 娘は綿菓子、駄菓子、チョコバナナ、人形劇 などで大満足。

時たま家族連れの教官と遭遇するのが少し面白い。 父親は邪頭研をちらと覗く。 午後に雨が降ってから急激に寒くなったので帰宅。


11月1日(金)

今日から大学祭なので、生協食堂が閉まっており、 昼食は駅前まで歩いて出る。 雨が降っているので、屋外で模擬店をやっている学生は 気の毒だ。

夕食を終えて大学に戻ると、一部の学生が研究室で鍋料理を 始めたので、11時過ぎまでダベる。 オフレコ、オフレコ。


過去の日記:
2002年 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月
2001年 12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月

2002年8月: リーズ滞在篇
1998年12月〜2000年3月: 不安なイスラエル日記


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