来週の講義の準備。
何か笑わせてくれるかと長嶋監督の引退セレモニーを見ていたのだが、 実際に笑ったのは泣いてばかりの徳光アナの取り乱しぶりであった。
最近はイスラム関係の書籍を書店でよく目にする。 もちろん先日のテロの影響であるが、日本人が イスラム世界に関心も持つようになったこと 自体は良いことだ。 皮肉なことに、テロを通じて日本人は国際政治の ダイナミズム体感する機会を得ている。
私はユダヤ教、キリスト教、イスラム教の相互関係が 知りたくて、イスラム関連の本をいくつか読んだ。 今回の事件の根底には、何十世紀にもわたる宗教、 政治、民族の複雑な「ねじれ現象」が横たわったいる。 それは決してアメリカの報復攻撃で解決するものではない。
前に勤めていた大学で修士課程を修了した学生が、 研究室を訪問してくれる。 元気そうで何よりだ。 夜は研究室の学生も一緒に調布で夕食。
次回の物理学会(立命館大)ではソフトマターのシンポジウムを開催する 予定である。 先日、徳島で開かれた物理学会に行ったのも、そのことをインフォーマル・ ミーティングで提案するためであった。
これまで練ってきたプログラム案に基づいて、メイルで講演依頼を行う。 すでに何人かの方から快諾をいただいた。 シンポジウム以外にも秘策を準備している。 お楽しみに。
共同研究者と顔を付き合わせて、論文の打ち合わせをする。 そろそろ来週から始まる講義や実験のことを考えねば。
予想通りakiko は売れてきた。 11月21日には、早くも第二作「アップストリーム」が発売される ことになった。 こちらの情報にも注目。
化学熱力学の試験。 教室協議会。 試験採点。 JJAPの編集作業。 日記書き。
ワイルズ先生、これが私の現実なのです。
藤原正彦の「NHK人間講座:天才の栄光と挫折 〜数学者列伝〜」を見る。 最終回の今日は、フェルマーの予想を証明したワイルズであった。
ワイルズの話は何度聞いても精神衛生上良くない。 藤原氏も言っていたが、同時代に生きる研究者として、 ワイルズのあまりにも偉大な業績に嫉妬心を抱かぬものは いないだろう。 私のように全く分野の違う研究者でも少なからず悔しさ感じるの だから、周辺の数学者の心境は推して知るべしである。
ワイルズが8年もの間、すべての時間とエネルギーを研究に注ぎ込んだ という話も気にくわない。 日本の大学に勤めている限り、そんなことはあり得ないのだ。 また、短いタイムスケールで成果を迫られるこのご時世では、 8年間も秘密を貫くのは不可能だ。
結局そこまで自分の信念を貫き、常に集中力や精神力を持続させ、 文字通り心血を研究に注ぎ込まないと自然科学の歴史に名を刻む ことができないのかと思うと、それが当たり前とは言え、 どうしても気分が落ち込む。
東京オペラシティ内の近江楽堂にて、「ウィリアム館」による シェークスピアの「十二夜」を観劇。 演出を従弟の小林拓生が担当している関係で招待されたものである。
長くてひねった台詞が多いので、それを生きた言葉として発し ながら演じるのは大変そうであったが、若者が一体となって 芸術的目標に向かって邁進する姿はなかなか爽やかであった。
彼岸。小平霊園で墓参り。
朝、悪友から邪悪なメイルが舞い込んでいる。 今晩、霞ヶ関のイイノホールである「にっかん飛切落語会」への お誘いだ。 出演は、桂快治、立川笑志、春風亭昇太、笑福亭鶴光、立川談志。
鶴光は私が高校生だった頃の深夜放送「オールナイト日本」の イメージがあまりにも強過ぎるのだが、今日は本格的な話芸の極みを 見せてくれた気がする。 談志の笑いのセンスはビートたけし的で元々好きではない上に、 悪友の解説でも今日の出来は良くなかったそうだ。 (たけしは談志の弟子だったはず。 最近のたけしはさっぱり面白くないのに、周囲が無理に笑って いて痛々しい。)
その他の若手メンバーは「ピットインの昼の部」といったところか。 やはり場の雰囲気を作る力が真打ちには遠く及ばない。 生の落語が初体験だった私には、そういった観察も含めてすべて 楽しかった。
午前中は不在中にたまった仕事を片付けて、 午後は学会で得た着想を少し計算してみる。
徳島での二泊はよく眠れなかったので疲れた。 午前中の空いた時間に市内の「阿波踊り会館」を見物。 家族へのお土産に困ったが、結局「ぶどう饅頭」 という怪しげなものを買ってしまった。
飛行機の便を少し早めて、無事帰京。 天気が良かったので富士山の山頂も見えた。 「日本人が富士山を見下ろしては罰が当る」と誰かが 書いていたのを思い出す。
講演を聞いたり、複数の人と議論しているうちに、あっという間に 夕方になる。 やはり研究にはこういう刺激が必要。
一次会では魚を食べ、二次会では京大関係者と合流。 相変わらずの人達だ。
お昼の便で羽田を発ち、徳島入りする。 バスとタクシーを乗り継いでホテルにチェックインしてから、 会場の徳島文理大に到着したのは3時過ぎ。
高分子・液晶で講演を聞き、そのままインフォーマル・ミーティング に出席する。 シンポジウムの提案をして、了承される。 さらに、領域12のインフォーマル・ミーティングでも同様の 提案を行い、学会参加の目的は終了。
夜は餃子屋でシンポジウムの打ち合わせ。
「コロイドおよび界面化学討論会」に出席するために、 明星大学へ行く。 今日の会場は、春の物理学会が開催された中央大学の、 ちょうどモノレールをはさんだ反対側である。
座長は無難にこなすことができたが、自分の発表では 10分という短い時間に最初から焦ってしまい、かなり ぼろぼろであった。 おまけに、「それはスケーリング理論ではない」とか 「貧溶媒に適用できないのでは面白くない」などとコメント され、不安定な体調が一気に悪くなりそうであった。
それでも、明日から徳島の物理学会に行きます。 17日は領域12のインフォーマル・ミーティングで お会いしましょう。
体の芯から疲れているような気がする。 眠くて仕方がない。 しっかりと休ませてもらい、やや回復する。
フライブルグ大学のブルーメン(Blumen)氏のセミナーがある ということで、初めてICUを訪れる。 中央線の武蔵境駅からバスに10分程度乗って目的地に着く。 あまりに広大なキャンパスで、大学が都内にあることを忘れて、 どこか外国にいるような錯覚を覚える。
ホストの北原先生からブルーメン氏を紹介された後、11時から セミナーが始まる。 なぜか外部の人は私だけで少し寂しい。 "fractional derivatives"を使ってレオロジーの概念を広げよう というもの。 確かに実験データはきれいにフィットできるようだが、物理的 な意味が分からず納得できない。
帰宅途中で吉祥寺のMEGに久しぶりに立ち寄る。 究極のオーディオセットを堪能する。
連日、深夜までテロ関係のニュースを見過ぎて疲れたせいか、 体調がすぐれない。
昨日の日記では、イスラム側が狂気の沙汰に及んだように書いたが、 これはむしろ逆であるような気がしてきた。 複数のハイジャク犯側は極めて冷静沈着に行動したとしか思えない。 狂ったのはむしろアメリカ人の方だろう。
アメリカが報復攻撃をしても、問題の解決が遠のくばかりか、 西側諸国がイスラム世界を踏みつけている構造を 今まで以上に強化するだけだろう。 今回の事件は戦争ではなく、あくまでもテロなのだ。
世界中の人々の耳目を奪っているアメリカの同時多発テロについての感想。
仮に今回のテロがイスラム勢力によるものとすれば、イスラム世界は ここまでしなければならないほどの屈辱にさらされ、国際的に追い詰め られているという視点が重要である。 すべての人間には理性と狂気が紙一重で存在しており、立場が逆になれば 同じことをしたかもしれないという想像力も必要だ。 「善のアメリカ」対「悪のアラブ」という単純な構図ではない。
再びヘルフリッヒ先生の怪しげな論文が出ているのを見つける (EPJE, 5 (2001) 423)。 揺らいでいる膜に埋め込まれた剛体間に働く力について。 ヘルフリッヒ先生は数年前から「剛性率の正の繰り込み」 を主張して、歴史を引っくり返そうとしているので、 期待と不安の入り混じった気分で読み始めた。
ざっと目を通して、すでにグリアンらが行った計算を別の方法で やり直し、同じ結果を得たということことが分かった。 ヘルフリッヒ先生はグリアンの計算方よりも分かり易いと書いて いるが、相変わらずの独特のフォーミュレーションでしっかり 分かりにくい。
院生の学会発表練習。
マイクロエマルションに両親媒性ブロックコポリマーを入れて 可溶化度を増大させる例の実験で、ゴンパーとリヒターと ストライが組んだ本論文がいよいよ出た(JCP, 115 (2001) 580)。 私もこの実験に関して理論的に一石投じたいのだが、この三人が がっちりとスクラムを組んでいると、なかなか容易に切り崩せるもの ではない。
いずれにせよ、ソフトマターの研究において、それぞれの専門家が うまく協力し合って大きな成果が挙がっている良い見本だ。 日本でもこういう雰囲気を目指したい。
レンツとネルソンの論文(PRL, 87 (2001) 125703)に目を通す。 この問題のアイディアは漠然と考えていたので、それなりに ショックである。 しかし、そこをきっちりやるのは、さすがネルソン先生。 レンツは元々リポスキーの学生で、博士論文でも濡れに関して いい仕事をしている。 これから確実に頭角をあらわしてくるだろう。
この日記の更新状況が ここで正しく表示されないのはアクセスカウンターのせいらしい。 でも正直なところ、今は密かにアクセス数10000を楽しみにして いるので、カウンターは外したくないのよね。
夜、床に着こうとしたら、NHK・BSの「心の旅」の再放送があり、 ジョージ川口がニューヨークを訪れるという内容だったので、 つい見てしまった。
ジョージ川口がエルビン・ジョーンズの自宅を訪れる場面では、 相変わらずエルビンの奥さんの(知る人ぞ知る)ケイコ・ジョーンズ (日本人)が完璧に仕切っていて笑ってしまう。 川口さんとエルビンが共に74歳でまだ現役というのは立派 といか言いようがないが、二人して随所で超然とした雰囲気を 醸し出していたのはなかなか愉快であった。
同じ学科のスタッフが、この日記を見て、森毅の 「異説 数学者列伝」(ちくま学芸文庫)をわざわざ私の部屋に 持ってきてくれた。 コワレフスカヤが女性であることさえ知らない私の無知ぶりを 心配してくれてのことであろう。
30年近く前に書かれた本では、30名の数学者の 「ボロボロ人生」が描かれている。 早速、帰りの電車で、コワレフスカヤ、ポアンカレ、 ラッセル、ウィナー、ノイマンの章に目を通した。
昨日のことになるが、院試を終えた学生達と夕食を一緒にし ていた時の話題。
先月のある研究会において、 日記でしか知らなかった福田氏に初めて会うことを 楽しみにしていた彼らは、福田氏の前に講演した慶応の 藤谷さんを見て、「福田さんはこの人に違いない」と思ったそうだ。 私は事実だけを書いて、コメントはしないことにする。
(その後、福田氏からメイルがあって、学生はちゃんとプログラムを 見るように、という指示があった。)
大学院試験二日目。面接試験。
大学生や大学院生の学力低下が叫ばれる一方、将来の灯りがまだ 完全に消えているわけではないと感じた。 また今回の試験で、関東地方の大学生の受験動向も垣間見ることが できた。 さらに各大学の院試日程に絡んで、受験生と大学側の間に複雑な 駆け引きがあることも知った。
大学院試験一日目。
一昨日の日記を書いていて思い出したのだが、テナーサックスの ジョー・ヘンダーソンも今年の6月30日に死去した。 享年64歳。 ジョー・ヘンダーソンと握手した時には、この人の謙虚さを感じた。 モード時代のモダンジャズの巨人も次々に亡くなっていく。
今日の日記は手抜きだが、邪頭的なのでよしとしよう。
この日記が こんな所からリンクされているのは有難いのだが、 どうして私の日記の更新情報は正しく表示されないのだろう? でも逆に正常に作動すると、勤務時間中に日記をいじったことが バレてしまうので、怖いなぁ。
藤原正彦氏の「NHK人間講座:天才の栄光と挫折 〜数学者列伝〜」 を視聴。 今週はコワレフスカヤで、恥ずかしながら女性であることさえ 知らなかったので、なかなか興味深かった。 来週はいよいよ「南インドの魔術師」ことラマヌジャン。
チャールス・ロイドの"Hyperion with Higgins" (ECM)を聴く。 ビリー・ヒギンスの最後の遺作だ。 5年前の肝臓移植を経て、今年の5月3日に他界したドラマーである。
10年近く前に彼のドラムを間近で見た時の衝撃は今だに 忘れらない。 それは、彼がジャズの演奏をしているのではなく、 人々が彼の演奏するものをジャズと呼んでいるという、 計り知れない奥深さを認識させれたからである。 これは私にとってのコペルニクス的転回であった。
演奏後のビリー・ヒギンスとの握手では、彼の人なつっこい性格が そのままこちらの手にも伝わってきた。 そして、翌日なぜかじん麻疹になった。 映画「ラウンド・ミッドナイト」でもいい味を出していたよな。
そんなことを思い出しながら「おセンチ」に聴いていたので、 CDを批評する気持ちは全くありません。
ここのところ、イスラエルとパレスチナの衝突のニュース を耳にしない日はない。
しかし逆に言えば、もしも研究でイスラエルに行くことを 考えている人がいれば、間違いなく今はチャンスである。 学振などで応募すれば、おそらく非常に高い確率で採用される と思う。 外務省の安全情報でも危険度は「2」なので、まだ渡航可能だ。 (ただし、西岸およびガザ地区は「4」で不可。)
イスラエル国内の観光はしづらいだろうが、日常生活は問題 ないはず。 歌舞伎町で遊んでいても、災害に巻き込まれることはあるのだから。
1998年12月〜2000年3月: 不安なイスラエル日記