以前にざっと目を通したヴァイクルの論文原稿を再度 チェックする。 FAXで送ろうとしたが、うまくいかなくて困る。
明日から京都。
諸事情から、今年度は私も3年後期の物理化学実験を担当 することになっている。 これがいかに恐ろしいことか、少なくとも(私を知る)物理関係者には お分かりいただけるだろう。 今日は午後にその予行演習を行なった。
テーマは「ブラウン運動」ということで、純水や高分子溶液中の ラテックス粒子の運動を計測するものである。 高分子溶液の粘度も測定する。
ソフトマテリアルを理論的にしか扱わない私にとって、 当初かなり気が重かったのであるが、最終的にはなかなか貴重な 経験であると思うようになった。
それにしてもまったく、困っちゃうよね。 仕事の帰りに本屋に立ち寄ったら、 筒井先生の新刊「天狗の落し文」(新潮社)を見つけちゃったのだから。 しかも、今日が発売日なのよね。
ようやく夏休みになって腰を落ち着けて仕事をしようと思っていたのに。 でも、気付いたらもう本を手に取って、レジに突進していたの。 あさっての京都出張まで我慢できるかしら。
寝る前に「新・ゴーマニズム宣言10」(小学館)、終了。
休日としての時間を過ごす。
娘が昨日から水ぼうそうを発症する。 今日は順調に発疹が増えている。 私はイスラエル出張前に予防注射をしたので大丈夫だろう。
こうして夏休み最初の外出計画はあえなく潰れてしまい、 いつも通り私が「ケロケロケロッピ」と「ドラえもん」 のビデオを借りてくることになった。
昨晩から、かなりしっかり睡眠をとって体調復活。
午後は三菱化学の樹神君のセミナー。 高分子ミセルの平均場理論についてじっくりと聞いた。 東大の古沢さんも参加してくれる。 夜、中華料理店で会食。
リーナス・トーバルスの「それがぼくには楽しかったから」、終了。 後半はLinuxそのものよりもビジネスがらみの内容が多く、 あまり面白くなかった。
以前にも書いたように、前半にはペンギンのロゴの由来、 「Linux」の前には「フリークス」と呼ばれていたなどの小ネタも多く、 当然ながらWindowsの悪口も随所にちりばめられていたので結構楽しめた。 同時にトーバルスのレベルのコンピュータ・オタクのコンピュータ に対する接し方が、いかに凄まじいかも思い知らされた。
集中講義の肉体的疲労(主に喉と腰)と、精神的な虚脱状態が重なって、 いくつか事務的なことを片付けただけの日。
そうそう、例のかき氷の放送日は8月14日と決まったそうだ。 それについて番組プロデューサーから電話があったのだが、 さらに私が「物性研究」に何を書くのかということまで気にして おられたので、少しびっくりする。 まだ執筆の約束をしていないと説明すると、なぜか安心された様子 であった。
集中講義の2日目。今日はかなり涼しい。
午前は流体膜、曲率エネルギー、午後はミセル、ベシクル、 マイクロエマルションなどの説明。 15時からはセミナー形式で、最近の私の仕事について話した。
今回は初めての本格的な集中講義ということで、私にとっては 非常に良い経験であった。 未熟な講義に長時間付き合ってくれたお茶大の学生、ならびに 外部からわざわざ出席してくれた方々には改めてお礼を申し 上げたい。
お茶大での集中講義の1日目。
パソコン持参なので、汗だくになってお茶大に到着。 プロジェクターも無事に働いて、最初のコマはPower Point を使ってソフトマテリアルの概観を説明する。 引き続き分子間力について触れ、昼食休憩となる。 午後は、相分離、界面、界面張力などの基礎的内容。
午後の講義の最後の10分あたりで、太田隆夫教授が 突然教室に現れるという強烈ないたずらに見舞われた ものの、一応予定通り初日を終えることができた。
夜は今井研主催の納涼会に私と都立大の学生が参加させて もらい、楽しい時間を過ごした。
午後、長い長い会議。
通勤中に、以前から読みかけていた リーナス・トーバルスの「それがぼくには楽しかったから」 を続けて読む。 Linuxの裏話満載で面白い。
UNIXの「小さいものは美しい」という哲学と対比させて、 応用が利かない例としてWindowsが挙げられているのは 当然としても、「中国語も複雑さから出発して、その 複雑なもの同士をある限定された方法で組み合わせている だけ」と斬って捨てている。 コンピュータ言語と人間言語を並列で語るのはいかがなものか?
集中講義の最終準備。 娘の風邪がうつったようで、若干喉の調子がおかしいので、 体調を整える。
夜、映画「うなぎ」をビデオで観る。
以前に加藤先生と、ヘルフリッヒの自発曲率と イスラエルアチビリのサーファクタント・パラメータの関係を 議論したときに教えていただいた91年のハイドの論文に目を通す。 恐らくこの論文は間違っていると思われるが、判然としない。 しかし、「自発サーファクタント・パラメータ」という考えには 唖然とさせられる。
前期最後の物理化学補習ということで、午後から出勤。 補習終了後、学生と閑談。
奥村晴彦の「LATEX2e 美文書作製入門」(技術評論社)のp217を見て、 やはりAcrobat Distillerのジョブオプションの指定がまずかった ことを認識。 "PrintOptimized"を選択して、ようやく講義ノートのまともな PDFファイルができる。
今日は休日で、朝ゆっくり寝れるかと思ったのだが、 昨晩、同居人が言うには、夏休みに入った娘をラジオ体操 に連れて行くことにしたらしい。 ということで、ちょうど地震もあって、朝6時に叩き起こ される。 さすがに私だけはラジオ体操を免除させてもらった。
午後から娘が発熱。 近くの病院で風邪と診断される。 やはりラジオ体操にやられたか。
今日は在宅だったので、とりあえずWindows上のdvioutから プリントアウトした講義ノートを、宅急便でお茶大に送る。
集中講義の準備の詰め。 と言っても、単に講義ノートをプリントアウトしたり、 Power Pointがこけることを想定して、OHPシートに プリントアウトなどなど。
講義ノートのPSファイルのPDF化で手間取る。 元々30MBあるPSファイルが、たったの2MBのPDFファイルに なってしまうのがどうも変だ。 しかもWeb上にPDFファイルを置いてもうまくダウンロード できない。 たぶん、Acrobat Distillerの使い方が悪いのだろう。
夕方、教授会。 最後に事務方から「汚職防止研修」の説明があったのだが、 司会の研究科長が、うっかり「次は「汚職研修」です」 と紹介したので、皆大笑い。
液晶プロジェクターをお借りした城丸さんは、この日記を 読んで下さっているようで、Power Pointに関する体験談 をメイルで送って下さる。 実は城丸さんも、毎週のご自身の講義でPower Pointを使って おられるそうで、講義前日はその準備が深夜に及んだらしい。
気合が入っている分、学生の反応を気にしておられるようだ。 私もPower Pointで滑っているだけに、その気持はよくわかる。
午後、高校生のためのオープンキャンパスが開催される。 化学科の中では、私の所属する研究室も公開することになっている。
私も持ち時間5分で何かシミュレーションの結果を見せることになった。 そこで慌てて こんなものを作って、廊下に複数台置かれているパソコンから アクセスしてもらうことにした。 (私の居室は非常に狭くて、とても一度に10人以上の人間は入れない。)
予想通り、高校生には全く受けなかった。 この手のダメージが昨日から続く。
コロイド討論回の予稿を準備。
化学熱力学の最終回。 昨日の予告通り、講義の後半はPower Pointを使ってソフトマテリアルの概説を 行った。 実はこれ、来週の集中講義のために準備したものなのだが、ちゃっかり授業で 予め練習してみようと考えたのだ。
しかし、こちらの意気込みとは全く裏腹に、Power Pointを使い始めて4、5枚目で、 明らかに学生の表情から精気が失せ、半分近くが寝始めた。 講義の終了後、出席していた研究室の学生に、どこがまずかったかを 尋ねてみると、私の話が散漫でまとまっていなかったからだとういう。
確かに。 しかし、早川さんの日記にもPower Pointのプレゼンは眠くなると書いてあったことを 思い出すにつれ、ふと次のような考えに到った。
Power Pointでプレゼンをすると、進行があまりにもスムーズすぎて、見ている 方にとっては却って退屈なのではないか。 体裁が統一されていると、単調な印象を与えるのかもしれない。 OHPの場合、シートの交換には必ず音や体の動きを伴う。 また、探しているシートが出てこなくて四苦八苦したり慌てたりすることは 発表者にとってはつらいが、観客には適度な刺激になっているのかもしれない。
でも来週はやっぱり寝られるとまずいのよね。 もっと内容を考えよう。
午前中、ゼミ。 午後、集中講義の準備。 夜、学生と飲みにいく。
明日の講義では初めてPower Pointを使う予定。 化学科の城丸さんに50万円の液晶プロジェクターをお借りする。 この程度の機器がどうしてこんなに高価なのか、技術的な ことを知っている人がいたら教えて下さい。
37回目の誕生日。 なのに、ただひたすら集中講義の準備。 周囲から40歳もすぐそこだと冷やかされる。
ニ週間前のテレビの取材が終わってから、かき氷の話題に触れて いない私もいけないのだが、先日メイルで質問させていただいた方から ご丁寧なメイルをいただいた。 ここに重要な部分を転載させていただく。
「わたしの考えでは、おそらく最終的に好村様が取材でお答えに
なった回答、すなわち「凝固点降下+不完全相分離説」がもっと
も正しいと思っております。あとは水溶液の初期濃度、冷却速度
などの条件に依存して、かき氷の性質も変わってくるはずだと思
います。」
「わたしが書いた「水酸基が氷表面に吸着する」という記事が、
誤解を与えてしまった部分もあったのではないかと思い、
その点を少しだけ補足させていただきます。
先のメールでも書きましたとおり、水酸基を持つすべての物質が氷
表面に吸着するわけではなく、むしろ吸着するものは非常にまれ
です。氷表面に吸着して氷の結晶成長や凝集を防ぐものとして、よ
く知られているものに不凍化タンパク質があります。これは極地の
生物(魚など)が持つ特殊なタンパク質です。このタンパク質分子の
側面には等間隔で親水基が並んでいることが知られており、その
間隔と氷結晶のある特定の面({20−21}面)の分子間隔がほぼ
一致することも知られています。これが、不凍化タンパク質が水素
結合によって氷の表面に吸着できる理由です。不凍化タンパク質の
水溶液から作った氷は、{20−21}面の成長が極端に抑制される
ことから、結果的に非常に特異な細長い針状の氷となります。」
私の考えにご賛同いただけたのは大変喜ばしいが、氷の結晶化の 奥深さを改めて認識させられるメイルであった。
朝、集中講義の準備。
昼前に義理の父親が呼吸困難になり、救急車で中野共立病院に 搬送されたとの連絡が入る。 我々もすぐにかけつけたが、幸い単なる貧血と診断され、 ご本人も比較的すぐに回復したので、夕方はに無事帰宅。
落ち着いた義父が点滴を受けている間、娘と一緒に 中野北口のブロードウェイを探索する。 オタク系の怪しげな店がたくさんあることを発見。 いくつか覗いてみたい店もあったが、結局、おもちゃ屋で 娘の見張りをするのみ。
一日中、集中講義の準備。 あれだけ悪口を言っていたPowerPointを触り始めて、 結局はまってしまう。 こんなことではいけないと思いつつも、本質的ではないアニメーション などについ時間を割いてしまう。
邪頭な友人から邪悪な誘い。 19日の落語会(桂文珍と立川志の輔ら)と、 22日のピットインのライブ(チャールス・マクファーソン)。 残念ながら集中講義の準備があるので今回は無理か。
大学院講義の最終日。 集中講義の準備。
ポツダムのマックス・プランク研究所に滞在中の日本人研究者 からメイルをいただき、「不安なイスラエル日記」の別刷を ご希望とのこと。 残念ながらこれまでに面識のない方であったが、ラングミュア膜 の破壊という興味深い実験をされているようなので、彼の論文 にも目を通してみようと思う。
早速、別刷を送付する。 残部はまだあります。
集中講義の準備。 GIFからEPSへの変換であれこれと試行錯誤。 結局、BMPを経由して一旦JPEGに変換してから、 最終的にGimpでEPSに落とす。 もっとスマートな方法をご存知の方、教えてください。
午前中、化学熱力学の講義。 来週で終わり。
集中講義の準備。 Photoshopのver.5.0で作製したEPSはどうしてTexに取り込めないの だろうか?
サフランが今年の前半に行なった"Physics of Soft Matter and Biomaterials"の講義ノートを取り寄せて目を通す。 化学の学生を対象とした講義なので、私にとっては非常に 参考になる。 物理、化学、生物の各分野が非常に良いバランスで盛り込まれている。
サフラン講義ノートを参考にしながら、2週間後の私の集中講義の 内容を練り直す。
夕方、車で新宿へ行こうとしたら大渋滞に巻き込まれてしまう。 明らかに認識不足であった。 結局、目的を果たせずに退散する。
妻の友人が来宅。 わけあって、我々の家族と彼女でユニクロ光が丘店へ行く。 愚娘は大人用の980円のサングラスをとっかえひっかえ かけてご満悦である。 それにしても、人間の頭の大きさは、大人も三才児もさほど 変わらないのね。
都立大の大学院を志望する他大学の学生と面談。 なかなか元気があってよろしい。
体調はほぼ回復するが、若干変。 朝、大学院の講義。 その後、昨日のセミナーのLai氏と議論。 午後、会議。 なかなか研究の時間がとれない。
ヴァイクルから送られたきた修正論文に目を通す。 こちらの指摘をきちんと直していないので不機嫌になる。
朝から軽い頭痛で、やや不調。
午後、物理学科で台湾のLai氏のセミナー。 帯電コロイドの相挙動の計算。 DLVO理論を電解質系にも適用できるように拡張して いる(?)ようだが、どれほど重要な効果か理解できない。
ウインブルドンのテニスを見つつ、早く寝る。
午前中、化学熱力学の講義。 教室の後ろの席で堂々と実験のレポートを書いている ボケは講義に出なくてよろしい。 しかも、座席の近くまで行っても、一向にやめる気配が ないのが大変よろしい。 次回以降は覚悟しておいてほしい。
ランガーの結晶成長のレビューを眺める。 結晶成長は奥深い。 番組では説明用のアニメも準備される予定で、 その作製にあたって、いくつか気をつけるべき点を プロデューサーに連絡する。
いよいよ撮影日である。
午前中にゼミがあった上に、思わぬ用事も入ってしまい、 慌てて昼食から戻ってくると、すでに撮影スタッフが部屋の前で 待機していた。 心の準備もないまま、すぐに台本通りの撮影へ。 さすがに頭の中は真っ白けで、自分でも何を言っているのかよく 分からないまま、三回ほど同じ一文を呪文のように唱えてOK が出る。
結局、撮影はあっけなく終わってしまった。 こうして半月に及ぶ「かき氷騒動」は一段落したわけだが、 実はまだこれで終わったわけではないのだ。 大変有難いことに、「物性研究」の編集長から、今回の顛末を 科学的正解も含めて記事にするよう依頼を受けているのだ。
私としても、今回は色々な方に関心を持っていただき、様々な 情報を寄せていただいたので、何らかの形で感謝の意を 表したいと思っている。 しかし、ここのところ本来の職務が完璧に滞ってしまっているので、 しばらく回復の時間をいただくことにしよう。
あ、そう言えば、放映日はプロ野球次第で、今月末か来月中旬 だそうです。 いずれこの日記で公表します。 とりあえず、皆さんどうもお世話になりました。
「ラマヌジャン書簡集」をつらつらと眺めていて、 ラマヌジャンからケンブリッジのハーディに宛てた手紙中の 積分公式の一つをMathematicaにやらせてみたところ、 答えを出せなかった。 一瞬がっかりしたが、やがてそれは安堵に変わっていった。 こういうものは安直にできてはいけないのである。
私がラマヌジャンに興味を持つのは、彼が西欧的価値基準 とは全く異なる精神世界から出現した天才だからである。 日本人ならではの美意識が、自然科学で花開く可能性のヒント が彼の一生に隠されているに違いない。
今日は本来の邪頭的活動をしたので、その話を少し。 実はドラムのマイク・レズニコフに弟子入りすることを密かに 考えている私は、久しぶりに彼の演奏を見るために、 ピットインの昼の部に親子三人で潜入。 小宅珠実カルテット。
愚娘は演奏中に「お父さ〜ん、お母さ〜ん」と店内を走り 回るので、とても落ち着いて聴けなかったが、本人は 休憩時間にギターの増井茂に遊んでもらって大喜び。 私もレズニコフさんに弟子入りの可能性を打診し、色々と アドバイスを受けた。 ゆっくり考えよう。
1998年12月〜2000年3月: 不安なイスラエル日記