夕食後にテレビをつけたら、先日、都立大が試験会場になった 「恋愛センター試験」の様子をたまたま放映していた。 試験で一番になった人が菊川怜とデートができるという企画である。 それにしても、私が普段講義で使っている、ある意味で神聖な 教室がこんなアホなことに使われたのかと思うと、改めて情けない 気分になった。
実際、番組として放映されたのは、試験で一番に選ばれた 男性と菊川怜のデートの場面がほとんどで、都立大がそれほど 表に出てこなかったのは不幸中の幸いであった。 さらに、男性のユニークなキャラクターのせいもあり、 それはそれでつい面白く見てしまった。 後で二重に情けなくなった。
昼食中の学生との会話。 その学生はアエラの駄洒落コピーが好きだという。 一瞬箸が止まった私は、その場で思い付いた駄洒落論をまくしたてた。 「駄洒落を含む文章に意味があってはいけない」 「全体がナンセンスでなければいけない」 「作為が感じられてはならない」
学生は反論しなかった。明らかに私が大人げなかった。
午前中、研究室ゼミ。 午後から、学生実験第5サイクル。 今日からブラウン運動の実験をする三宅君が、「ブランフォードに 行ったんですか」などと余計なことを言ってくる。
大槻ケンヂの「オーケンのめくるめく脱力旅の世界」(新潮社)は なかなか面白い。 14篇の旅のエッセイをまとめたこの作品は、情けないタイトルとは 裏腹に、心情的に訴えかけてくるものもあり、改めて大槻ケンヂ の文章のうまさに感心。
朝からの雨のせいか、いつの間にか一日が終わってしまった。 いや、よく考えてみれば昼寝をしたせいかもしれない。
午前中の化学熱力学の講義。 自分として、今日の講義の出来は不満足である。
午後は張り切ってブランフォード・マルサリスのライブを 見るためにブルーノートへ向かう。 しかし、手渡された整理番号が85番で、いきなり気合不足を 痛感させられる。 それでも最終的には、ドラムのジェフ・ワッツが真後ろ から「かぶりつき」で見える最高の座席がキープできて、 ほくほく気分。
座った位置のせいでほとんどドラムしか聞こえず、全体の音の バランスはひどかったが、それを幸いにひたすらジェフ・ワッツ と「気」のやり取りを行っていた。 その時の私を他人が見たら、恐らく麻原を見つめるオウム信者の 様相であったろう。
何をやってくれてもいいので、ライブを批評する気は一切ない。 彼らがやる音楽が邪頭なのだから。 唯一の不満はとにかく時間が短いこと。
来週は「都立祭」で講義や学生実験も一段落である。 化学科の1年生のクラスは模擬店でコロッケを作るらしく、 今日の補習授業が終わった後、私にチケットを1枚くれた。
それ自体は他愛のないことなのだが、 その1枚のチケットを通して、 教官と学生が対等に共存してこそ大学であると再認識し、 改めて彼らのために頑張ろうという気になった。 要するに嬉しかったのである。
最近買った本3冊。まだどれも読んでいないが、
今日は意外な電話が1件、かなり笑えるメイルが1通あったのだが、 残念ながら日記では書けない。
一方、別に今日書かなくてもよい話題だが、雑誌「アエラ」の広告 にある駄洒落コピーは何とかならないか。 不愉快になることもある。
それでもブランフォードへの思いは断ち切れず、予定を再調整して 今週の土曜日はブルーノートへ行くことにした。 ピアノがケニー・カークランドでないのは大いに残念だが、 すでに麻薬中毒で死んでしまったのだから仕方がない。 今思えばこの人は自分の命を縮めるような演奏をしていた。
akikoはすでにブランフォードのライブに行ったようだ。 それにしても、近頃の若い女性は「ゲロウマ」なんていう言葉を使うのね。 確かに生ジェフ・ワッツを見るとそう表現したくなるはずだ。
午前中、研究室ゼミ。学生実験第4サイクル。
かき氷でお世話になった人から、「サイエンスアイで野依さんが 怪気炎をあげるのを期待するのはは無理」とコメントされる。 それではしばらく待って、日本人のノーベル賞受賞者が30人に達した頃、 さんまに「ノーベルのから騒ぎ」という番組の司会をさせるのは いかがだろうか? ゲストは森毅あたりか。 (もちろんすべての方が存命という設定。)
実はこの後も色々と面白いことを考えたのだが、日記で公開するのは この程度にしておこう。 筒井先生、小説のネタに使えませんか?
イスラエル軍のパレスチナ侵攻はとどまるところを知らない。 特に最近のベツレヘムでの銃撃戦は、私にとっても他人事とは思えない。
イスラエル滞在中、初めてのドライブでイエス生誕の地でも観光 しようと思い、無邪気にイスラエル・ナンバーの車で訪れたのが ベツレヘムなのだ。 町全体にがアラビックな雰囲気が充満していて、国連の車が行き交うなど、 その時にもなんとなく様子がおかしいとは思ったのだが、帰宅してから ベツレヘムがパレスチナ自治区の一部であることを知り、すっかり肝を 冷やした思い出がある。 当時の(幸い今も同じ)同居人も顔面蒼白であった。
無知とは恐ろしいものである。 実のところ、この話は洒落にならなかったので 「不安な イスラエル日記」には 書いていない。
午前中、化学熱力学の講義。 恥ずかしながら、講義の内容を説明している時よりも、 雑談をしている時の方が学生の表情が生き生きとしている。 そもそも講義と雑談が分離しているようでは講義としてまだ まだ未熟であるわけで、講義全体が雑談的雰囲気で進行する のが理想的なのだろう。
「恋のから騒ぎ」を見てから「サイエンスアイ」に チャンネルを切り換える。 野依先生のインタビューだ。 先日の日記にも書いたように、的を射た辛口のトークを期待して いたのだが、インタビュアーの質問の仕方が陳腐だったせいもあり、 野依先生の発言にもキレがなかった。 いっそのこと、さんまに野依先生のインタビューをさせたら さぞかし面白かっただろうと思った。
来年度の物理化学系科目の担当を決める。 私の担当の大きな変更はなし。 後期の補習授業も始まる。
うーん、何か爆発的に気分がスカッとするようなことは ないだろうか? などと最近思っていたので、来週の金曜日はブルーノートで ブランフォード・マルサリス・カルテットのライブを見て、 ジェフ・ワッツで昇天しようと計画していたのだが、 よく考えたら補習授業で行けないことに気付いた。 大ポカである。
科研費の申請書を提出して、仕事をした気分になる。 研究ではないが、仕事は仕事なのだから、そういう気分になっても よいのだ。
akikoの日記で推薦されている エリカ・バドゥの"Baduizm"(Universal)と インディア・アリーの"Acoustic Soul"(Motown)を入手したので聴いてみる。 ソウル系には明るくない私が、全く知らないこの二人の歌手に 手を出してみたのも、akikoのセンスの良さを全面的に信頼してのことである。
確かに二枚とも理屈抜きで気持ちいい。 繊細な出来の"Baduizm"を聴いていると、気分が落ち着き、意識が鮮明になる。 久しぶりにトリップできるCDが見つかって嬉しいが、それでも、私はakikoの "Girl Talk"(Verve)の方が好きだ。
野依先生が「ノーベル賞30人」計画を批判したことは、 すでに多くの人がご存知だと思う。 ノーベル賞に関わる発言はともかく、 「学術は芸術と同じ」と言い切ったことや、(行き過ぎた) 産学連携への批判、日本の大学院教育の貧弱さを指摘した点 は大いに評価される。
しかし,だからと言って単純に学生数を増やせばよいと いうものではないことは、これまでの実績からも明らかだろう。 加えてポスドクの差も大きいというのが私の意見。 野依先生の今後の発言にも注目してみたい気になった。
久しぶりに新しい研究用のデスクトップ・パソコンを買うことにし、 比較的気に入っているAKIAに注文した。 楽しみが一つできた。
B類の講義中のいねむり防止策を考えようと思っているうちに、 一週間が過ぎてしまった。 結局、普通に授業をしてしまったのだが、「中国語で「エントロピー」 をどう書くか」などの適当に思いついた雑談を交えたせいか、 今日は先週よりもましであった。
午前中、研究室ゼミ。 学生実験第3サイクル開始。 一日を通して、自分でも笑ってしまうほど忙しい。
akikoの日記はなかなか面白い。 これだけ思ったことをすばずば書けるのは大したものだ。
小金井公園までドライブするも駐車場が満車で入園させてもらえない。 仕方なく少し引き返して、武蔵野中央公園でしばらく愚娘を遊ばせる。 たくさんの家族連れに混じって、紙飛行機オタクの集団を見かける。 「人間の幸せとはなんだろうか?」などと考える。
NHK特集の「ICHIRO」は面白かった。 彼が何度も口にした「感覚」という言葉が印象に残った。 感性の塊であるこの人の野球は、もはや芸術の域に達しているのだろう。
例の牛の病気に感染したわけではないのだが、昨晩、 焼肉を食べたうちの一人が帰宅できない状態になり、 我が下宿に一緒に泊まる。
午前中、「化学熱力学」の講義。 土曜日なのになぜか先週よりも学生数が増えた。 午後は重い会議が二つもあり、死にそう。
都立大にお客さん4人来訪。
夕食は、お客さんの2人と院生1人で何も考えずに焼肉屋へ行く。 閑散とした店内を見て、初めて例の牛の病気のことを思い 出したが、気にする人は誰もおらず、そのまま普通に食べる。
あとから知ったことだが、この日は東京でも牛の病気が 見つかったといって大騒ぎになっていたようだ。
学生実験の第2サイクルの最終日だが、本来4日間の 内容を3日間でこなそうとしたため、かなり尻切れとんぼ になってしまった。 学生がきちんとレポートを書けるかどうか心配だ。
ダウドとド・ジャンの、高分子閉じ込めの論文(1977)にはまる。 他の用事がすべて頭から抜け落ちる。
学生実験の第2サイクル開始。
先週から始めたB類の講義はどうも歯車がかみ合わない。 講義では聞かせどころがあり、通常はそこで学生の表情も 少しは変わるのだが、今日は常に半分程度の学生が寝ていて、 ほとんど外していた。 対策を練る必要がありそうだ。
今週は月曜日が休日で助かった。 回復に専念しただけあって、咳や鼻水はかなり収まってきた。 明日はなんとか出勤できそうだ。
なんとも空しいアメリカの空爆。 ビンラディンのビデオを通じた声明を聞くと、彼がテロの首謀者であるか どうかは別として、私にはそれなりの説得力が感じられる。 逆にブッシュの声明には偽善的な響きが伴う。
さほどの高熱ではないものの、体調は最悪で起きている ことができない。 一日中布団の中でぐったりとしながらうとうと、うとうと。
後期は土曜日に講義がある。 この講義は今年度から新しく開講するため、時間割上 空いている曜日が他になかったのだ。 そんなわけで愚娘の運動会は欠席。
朝、大学の正門前で目がテンになってしまった。 「恋愛センター試験・全国模擬試験会場」などと書かれた 大きな立看板が置かれ、多くの人間が集まっている。 すぐにテレビ番組の企画であることが分かったのだが、 私は非常に不愉快な気分になった。
大学が多くの人に対して開かれている必要はあるが、 それはあくまでも学問を志す人に対してである。 テレビ局としては都立大を会場に使えれば好都合であろうが、 大学として受け入れていいことにも限度がある。 河合塾が発表した大学「トップ30」私案には辛うじて 引っかかっていた都立大ではあるが、 こんなことしていたら落ちるよ、ホントに。
講義は無事に終了したが、その後、再び体調悪化。
昨晩は帰宅時に熱があったので、午前中はゆっくり休む。 咳は出るものの、体調はやや回復。 午後から出勤し、化学コロキウムIのガイダンス。 その後、今井さんと中谷さん来訪。
学生実験の1サイクルが終わった。 学生はよく頑張ったと思う。 とりあえず一安心だが、油断した私が風邪をひいてしまった。
三宅君に教えてもらった「バロン」の情報をブルーノートのホームページ でチェック。 今月はブランフォード・マルサリスがあるのね。 出演メンバーの最新作"Contemporary Jazz"は非常に充実した作品だったし、 久々にジェフ・ワッツも見たいのでこちらも外せない。
学生は四日間で一つの実験テーマをこなしていくので、今日あたり はかなり手馴れてきた様子だ。 そんな中、別の実験をやっている見知らぬ学生が私の所に来て、 突然「バロンがブルーノートに出るんですけど」と言い始める。 「ケニー・バロン」を「バロン」と略すあたりがめちゃ怪しい。 「あなた誰?」
少し話しをしてみると、その学生は都立大のジャズ研の部員であり、 この日記で私が邪頭基地外であることを知って、以前にメイルで セッションに誘ってくれた学生であることが分かった。 私が何度なくケニー・バロンを絶賛しているのをチェックしているのだ。 ピアノを弾くこの学生も「ケニー・バロンがいい」と断言した上に、 「レニー・トリスターノも好き」などとオタクなことをのたまうので、 私も学生実験を指導していることを思わず忘れてしまいそうであった。
三宅君、「バロン」の情報ありがとう。 それから、チャールス・ロイドも是非聴いてみてね。
古今亭志ん朝死去。死因は肝臓癌。 先日の落語会で、談志が「志ん朝は入院しているらしいが、 癌じゃぁないって言うから心配してんだ」と話していた。
化学実験二日目。 実験自体に大きなトラブルはなかったが、学生はデータを揃える ためにかなりの時間を費やしている。 それでもあきらめずに取り組んでいるのは立派。
悪夢の10月がやってきた。 3年生の化学実験を担当する6週間(毎週、月〜木)がいよいよ始まった。 私の担当は以前にも書いた「ブラウン運動」である。
実験開始早々、顕微鏡下でラテックス粒子をいくら探しても 見つからないというトラブルに見舞われる。 その後、ラテックス懸濁液が昨年用意したものであることが気になり、 新しい懸濁液を院生に準備してもらったところ、 何とか顕微鏡観察ができるようになった。 しかし、早くも初日の予定が大幅に明日に持ち越しとなってしまった。
今日の教訓:「ラテックス懸濁液は腐る」
1998年12月〜2000年3月: 不安なイスラエル日記