幸い風邪はひどくならずに済んだ。 体調回復。
休み中に片付けようと思って自宅に持ち帰った仕事も、 一度気分が萎えてしまうとなかなか手がつかない。
深夜にNHK−BSで放映していた「坂本龍一プレイ "ジョビン"」は、紅白歌合戦の直後だけに心地よかった。
鼻風邪は平衡状態だが、年賀状を少し書いた以外には 全くやる気なし。
昼寝をして、夕食を食べて、ソファに寝転がったまま 「ザ・ベストテン」と「タモリ倶楽部・空耳スペシャル」 を見て、また寝る。
年内の仕事を終えて緊張感が途切れたせいか、 これまでの疲労の蓄積がどっと出る。 予想通り、鼻風邪をひく。
晩はICUの北原先生宅で忘年会があり、家族で参加する。 私にとっては10年振りの参加ということもあり、 懐かしく楽しい一時を過ごす。 足立さんと藤谷さんは漫才コンビを組んではいかが? 2人の会話は面白過ぎ。
研究上の議論をするためにお茶大へ行く。 帰りに時間が空いたので、久しぶりに池袋を探索してみる。 学生時代にドラムを習っていた池袋音楽院はまだ存在している。 昔は無かったジュンク堂で大量の本を見て安心する。
最後に視察のつもりでタワーレコーズに入ったところ、 とんでもない掘り出し物を発見する。 それは"JAZZ SCENE USA"(Shanachie)という輸入DVDで、 フィニアス・ニューボーン・ジュニアと ジミー・スミスの1962年の演奏を記録したものだ。
フィニアスのCDはほぼ全て揃えているが、まさか 生きている間に彼の映像を見ることができるとは夢にも思わ なかった。 もちろん彼はすでに亡くなっているし、長期の精神障害の ため実質的な活動期間も非常に限られているのだ。
帰宅して食い入るように鑑賞する。 ジャズピアノ界で最高のテクニックを誇るフィニアスの演奏は、 実際の映像を見ても現実のこととは思えない。 まるで手品を見ているようだ。 大感激。 一方、ジミー・スミスもこの頃はまだ真面目に演奏していて、 すばらしい。 ドラムのドナルド・ベイリーも初めて見ることができて、 大満足。
実はサン・ラの"A JOYFUL NOISE"(WinStar)というDVDも同時に 入手しており、こちらも楽しみだ。
朝から体が重い。 大学で留守中にたまった雑務を片付ける。 学振に申請していた来年度の外国人招聘が認められたのは ラッキー。
名古屋行きの新幹線に乗車する直前に買った、 井上ひさしの「井上ひさしと141人の仲間たちの 作文教室」(新潮文庫)を読み終える。 この本によると、私の日記の文章は悪い文章の 見本のようなものだ。
「日本語は主語を省いた方がすっきりする」など、参考に なる点がいくつかあった。 なかなか面白かったので、ついでに「私家版日本語文法」と 「自家製文章読本」(ともに新潮文庫)も手に入れる。
この1年の汚れを落とす気分で帰宅前に散髪をする。
集中講義、2日目。 両親媒性分子の物理。
昼食時に八田先生がわざわざ訪ねてきて下さった。 今年度で退官されるとは思えないほど、熱くサイエンスに ついて語っておられたのが、非常に嬉しかった。 最近始められた皮膚の研究についてのお話しも興味深かった。 午後からは野依先生の受賞パーティーが学内であるらしい。
講義の後半は足腰や肩がかなりしんどくなってきたが、最後に私の 研究の話題も交えて無事終了。 ようやくこれで年を越せる。
控室に戻ってお茶をいただいていると、土井研の学生が 私の翻訳本にサインをして下さいと言ってきた。 サインをするべきなのは私ではなくサフラン先生なので、 大いにとまどった。 しかし、彼らの本を見ると熱心に勉強した跡が伺えるので、 こちらも嬉しくなってつい署名してしまった。 学生さんも二日間付き合ってくれてご苦労様でした。
東京の自宅にたどり着いた頃には、声も体もかなりぼろぼろ。
名大工学研究科にて集中講義、初日 ソフトマテリアルの概説、簡単なデモ、相分離、界面。 土井研の大学院生には釈迦に説法だったようだ。
夜は土井先生のお薦めで、谷口君、増渕君と一緒に 栄近くの「蘭の館」を見学する。 夕食は土井先生も合流して、豚しゃぶをいただく。 味は大変良かったのだが、不況のせいか、店内の客は まばらである。 最後の時間帯は我々しかいなかった。
周囲の雰囲気が寒い中、日本の大学の未来、物理の未来、 ソフトマターの未来を熱く語り合う。
いざ名古屋へ。 名古屋駅前はクリスマス用のイルミネーションで大混雑。
ホテルに着いてから、近くで夕食をとろうとしたものの、 なかなか適当な店が見つからない。 歩き回っているうちに寒くなる。 仕方なく、たまたま通りかかったうどん屋に入って 「みそ煮込みうどん」を注文したら、異常に量が少なく、 かなりまずかった。 気分が一気にローになる。
結局、マクドナルドで照り焼きチキンバーガーを食べ直すはめに。
明後日からの集中講義のための準備をする。 講義の一部でパワーポイントを使う予定で準備していた ところ、簡単な数式を書くだけで四苦八苦する。 性に合わない。
午後は娘と再び駄菓子屋へ。 全部で52円也。
今年(今年度ではない)最後の化学熱力学の講義。 ミセルの統計を説明してから、学生へのクリスマスプレゼント として、いくつか構造形成のデモンストレーションを行った。 学生はそれなりに面白がっていたようである。
そのうちの一つは、二種類の砂の混合系を砂山の上から落とすと ラメラ構造ができるというものである。 以前、マスケが東和大学での国際会議でやって見せたのが印象 に残っており、今回は器具をお茶大の今井研にお借りした。 改めてお礼を申し上げます。
今年も実質的に研究ができるのは今日が最後に近いので、 なんとか最低限の結果をまとめておこうと努力する。
学部3年生の研究室志望調査の結果をちらと目にした。 まだ1回目の調査とはいえ、うちの研究室はどうも人気がない。 毎年のことで「うちは少数精鋭」などと強がりを見せていても、 やはりこういうのは結構こたえるのよね。 3年生諸君、お願いだからもう一度よく考えてちょーだい。 残り物には福がありますよ。
会議が連チャン。 私の所属する研究室の新しい助手が正式に決まる。 来年4月の着任予定。
夜は研究室の忘年会。こちらも連チャン。 久しぶりに橋本に行く。 私のジーパンの色落ちが激しいのは、頻繁に洗濯し過ぎるためだと 学生に指摘される。 お茶大の学生も、私のジーパンが白過ぎると言っているらしい。 まったく、大きなお世話である。
年末を控えて、だんだん落ち着いて物事を考えられなくなってきている。 しかも、来週の集中講義まで体力がもつかどうか不安だ。
朝一番で計算機センターに電話して、SEに昨日来のメイルの トラブルを説明する。 結局、私が誤ったメイルサーバーを使っていたことが判明し、 仕方なく昨日出したつもりのメイルを全て送り直す。 順次予想通りの反応がきて、ようやく安心する。
午後からお茶大で「膜のシミュレーションの研究会」に参加する。 インフォーマルながら多くの人に会うことができて、楽しい時間が 過ごせた。 研究会後の懇親会はすっかり忘年会気分。 「麻原に似ている」と言われるより、「ビンラディンに似ている」と 言われる方が嬉しいと主張する人の隣に座る。 本当はどちらに似ているのだろう?
「聖書の土地の人々」(新潮文庫)を読み終える。 イスラエルやユダヤ人の日常生活に関心がある人には是非お薦め。 割礼に関して書かれた部分が面白いよ。
先週末からたまっていたメイルを一気に片付ける。 しかし、どうも送ったメイルに対する反応がおかしい。 そのうち、私宛のメイルが必ずしもすべて届いていないことが 発覚する。 すっきりしない。
モデルの相図の計算を進める。
午前中、研究室ゼミ。
計算機センターのシステム総交換のため、本日もネットワークは 使えないまま。 なるべくネットワークを使わないですむ仕事をしようとしたが、 今一つ能率が上がらない。
夜10時頃にようやくシステムが復旧する。 自分のネット依存度がいかに大きいかを認識させられた1日であった。
午前は高円寺。 娘は駄菓子屋で大喜び。 私は本屋でマイケロ・シャピロの「世界を動かしたユダヤ人100人」 (講談社)を購入して大喜び。
午後は中野。 娘はハムスターで大喜び。 私は中古CD屋で本田竹広の"Now on the Blues" (Village Records) を購入して大喜び。
NHK-BSの「心の旅」で米沢富美子氏が出演。 彼女が24歳で1年間滞在したイギリスのキール大学を訪れるというもの。
田中肇さんの集中講義はかなり中身が濃かったので、 さすがにまだ疲れが残っている。 単なる肉体的な疲労ではなく、圧倒的な業績を目の当たりに したことによる精神的な疲弊が大きい。
そんなことを言っていても化学熱力学の講義はあるわけで、 今日は高分子ブラシ、ミセルの統計力学。
夜は知人のお通夜に出席するために、三鷹の禅林寺へ行く。 実は半年前にも同じ寺に行ったばかりなのだが、まさか同じ年に ご夫婦が続けて亡くなられるとは思わなかった。 女性に先立たれた男性は弱い。
田中肇さん、集中講義二日目。 液晶の秩序化が絡む相分離、温度勾配中の相分離、ラメラ相とずり。 田中さんの研究の質と量に圧倒された二日間であった。 「研究とは概念を作り上げること」という基本的なことを再認識 させられた。
一昨日の記述に関して、早川さんから私の日記はばりばりの仕事系と 指摘される。 「情けない系」や「趣味系」でいくと言いつつ、実は結構「仕事系」に なっていて、そういう中途半端な自己顕示がとてもイヤラシイと思う。 あー、ネット上の日記は難しい。
都立大にて田中肇さんの集中講義一日目。 ソフトマテリアル全般、ぬれが関与する相分離、粘弾性相分離。
渡辺宙志さんの 日記やホームページは面白い。
こう言ってはなんだが、情けない日常が書かれている他人の日記の方が、 私には気楽に読めて楽しい。 逆に仕事や研究が充実している人の日記は、どうしても自分と比較して 自己嫌悪に陥るので、つい避けてしまう。
自分の日記が他人にどのように思われているのかよく分からないが、私として はやはり「情けない」路線でいきたいと思っている。 でも他人が楽しめる程度の「情けなさ」というのは結構難しかったりする。 渡辺さんの日記はそのあたりのバランスが絶妙。 でも、お願いだから改行してね。
モデルは意味あり。また別の論文査読。
先日来のモデルをもっと考えたいのだが、 2週間後の集中講義の準備をぼちぼち始める。 講義ノートを眺め直して、大局的な段取りを頭の中で整理する。 ノートにも少し手を加える。
夜間の講義。小テスト。 共著者から送られてきた論文に目を通す。
午前中、研究室ゼミ。 研究室として5、6年にわたって続けてきた、イスラエルアチビリの教科書 の輪読が終わったという記念すべき日。
Adobe Acorbat 5.0は、パワーポイントなどのマイクロソフト系のソフトで 作成したファイルをPDF化できるということで買ったのだが、それで作った PDFファイルをウェッブ上に置くとダウンロードできないという不可解な 現象に以前から悩まされていた。 しかし今日、ちゃんとバイナリーモードを指定してftpすればよいことが 判明して(当たり前か)、一見落着。
先週末に思い付いたモデルは必ずしもトリビアルではなさそうで、意外にも まだ潰れていない。
最近、聴いたCD。
午前中、化学熱力学の講義。 高分子の不屈長(persistence length)について。
大学の帰りに新宿のHMVで"An Evening of Fourplay" (Video Arts) という輸入DVDを購入。 "Fourplay"はボブ・ジェームス、リー・リトナー、ネーサン・イースト、 ハービー・メイソンからなるフュージョングループの名前である。 お目当ては、まだ一度も見たことのないハービー・メイソンのドラムにつきる。
いまさら「フュージョン」に関心はないが(フュージョンという言葉を使うこと さえ恥ずかしい)、高校時代の文化際でボブ・ジェームスやデイブ・グルーシン の曲をバンドで演奏したのはやはり懐かしい思い出である。 今こうしてハービー・メイソンのバカテクを目の当たりにすると、 自分が昔どうやって真似をしたのか極めて不思議である。 ああ、甦る恥ずかしい青春。
論文のレフリーが一本舞い込んでいる。
午前中は明日の講義の準備として、マイケル・エルバウムの 「微小管の バックリング」の論文を 眺める。 論文中の数式のフォローに少し手間取る。
ミルナーとルーの論文"Flory theory of unbinding transition" (J. Phys. I France 2, 1741 (1992))はどうにも不思議としか言いようがない。 恐ろしく単純な理論なので非常に魅力的なのだが、どうしてもその ココロが理解できないのである。 しかし、それが却ってスキを見せない美女のようで、ますます気に なってしまうのだ。
上の論文に刺激されて、とりあえず面白そうなモデルを一つ考える。 週末で潰すか。
お腹の調子はようやく回復してきた。 やはり睡眠が一番である。
今月号の雑誌「Newton」はずばり買いだ。 過去100年にわたる全ノーベル賞受賞者の顔写真入りカレンダーが 付録として入っており、これがなかなかすばらしい。 早速、研究室内の壁にでかでかと貼り付けた。
「聖書の土地の人々」(新潮文庫)を読み進める。 折りしもイスラエルとパレスチナの間では、再び憎悪の悪循環が 始まっている。 アラファトがエルサレムにこだわって、パレスチナ国家の樹立の タイミングを逃したのがまずかった。 歴史は決して元には戻せない。
お腹の調子は相変わらず悪く、しかも今日は時々胃が痛む。 胃腸が荒れているのだろう。 朝食は抜く。
一旦出勤してからすぐに生産研へ向かう。 ここのところ頻繁に駒場に通っている気がする。
昼食をはさんだ打ち合わせが終わった後、同じ場所で 開かれた東大物工の古沢さんのセミナーになだれこむ。 動的密度汎関数法の歴史と古沢氏の新しい展開について。 勉強することはたくさんあるね。
夜は学生を除く5人でイタリア料理を食べながら、ソフトマターの 将来についてちょっとばかり真面目な議論。 シンポジウムの企画に役立ちそうである。
昨晩、深夜に大下痢をして朝から体調不良。 冷凍の炒飯が悪かったのだろうか? 少し寒気がするが、ふらつきながら出勤する。
昨日のアンデルマンとの議論に刺激されて、ネッツやリポスキーら の関連論文を読み漁る。 私のアイディアはまだない。
夜間の講義の後、理由があって自分のLinuxマシンをシャットダウンしたら、 二度と立ち上がらなくなった。 再インストールするはめになる。 以前から立ち上がりがおかしくて気になっていたのだが、どうも ハードディスクに物理的損傷があるような気がする。 Linuxでハードディスクをチェック、修復する方法を知っている 人がいたら、是非教えて下さい。
たまたま本屋で見つけて買った、 三浦朱門、曽野綾子、河谷龍彦「聖書の土地の人々」(新潮文庫) はなかなか面白そうだ。
朝、通勤電車の中で川勝さんが「数理科学」最新号に書かれた 「ソフトマテリアルの数理」という記事を読む。 私だったらこんなに恐ろしいタイトルではとても手が出ないが、 川勝さんはさすがにうまくまとめている。 「ソフトマテリアルを記述するのに特化した新しい数学の開発 はまだない」という点は同感であるし、同時にソフトマテリアルの 弱点であるかもしれない。
午前中、研究室ゼミ。
午後はサックマンのグループのプレプリントを読んで、アンデルマン とメイルで議論。 久しぶりにこの方面の話題も面白いことになってきた。
学生が昨日のNHKの「青春のポップス」でakikoが出演していた と教えてくれる。 出演することは知っていたが、夜遅かったので見なかった。 やはりあっという間にメジャーになってきた。
小林よしのり「戦争論2」(幻冬舎)、終了。 疲れるので、後半は流し読み。 こういう内容であれば、敢えて漫画にしなくてもよいのでは? 政教分離が不可能という主張には私も同意する。
朝日新聞に野依先生の対談が載っているので読む。 先日のサイエンスアイのインタビューとは違って、今回はなかなか歯切れ がよい。 日本の大学院教育の貧弱さなど、野依先生の指摘には賛同できる 部分もあるので、更に一歩進めて、それらの問題を解決する具体的な 道筋を是非つけていただきたいと思う。
午後は家族と一緒に四谷の上智大学までドライブする。 新しく建て替えられたイグナチオ教会を見学する。 明るくて開放的な雰囲気の教会だ。 外では日曜学校の子供達がはしゃいでいる。 その後、構内で我々夫婦の共通の知り合いであるドイル神父と 偶然お会いすることができ、懐かしいひと時を過ごす。
午前中、化学熱力学の講義。 孤立高分子鎖のスケーリング理論。 ゴムを急に引っ張ると温かくなる理由を考えさせる。
昼食をとって休む暇もなく、打ち合わせのために生産研へ。 20時過ぎに終了し、歩いて下北沢まで行き、イタリア料理を食べる。 まだ結婚したくないと言う人、約2名。
1998年12月〜2000年3月: 不安なイスラエル日記