邪頭(じゃず)的日記
2001年11月


11月30日(金)

昨日会った知り合いが、研究の議論を続けるために都立大を来訪。 ぐちゃらぐちゃらと約2時間。

知り合いが帰った後、一年生の補習。 引き続き若杉さんのパーティー。 どうしても今日中に済ませないといけない用事があり、 パーティーを抜け出し、ビールの入った体でコンピュータを扱う。 間違えそうで危険だ。


11月29日(木)

朝からばたばたとした一日であった。

次期物理学会でのシンポジウムの提案が、昨日のプログラム委員会で 正式に承認されたとの通知を受ける。 それを受けて、関係者への連絡や関連企画の打ち合わせであちこちへの 対応に追われる。 一般講演の申し込み締め切り期日が迫っていることもあり、 CPMLにシンポジウムの情報を流す。

午後には自分や学生の学会講演の申し込みを行う。 しばらく発表をしていない間に、申し込み方法が随分とスマートになったのね。 それとは別件で一つ大きなチョンボをやってしまい、気分はかなりローになる。

が、落ち込んでいる暇もなく、東大駒場へ向かう。 ここである人と待ち合わせてから、菅原研の学生さんに合成膜の実験の話を 聞かせてもらう。 約3時間の議論を終えて、下北沢で広島風お好み焼きを食べる。 喫茶店で生物進化の議論をして帰宅したのは23時過ぎ。


11月28日(水)

昨日取り上げた本の中からフレンケルの講義ノートを読み耽る。 コロイド分散系で何が面白くて、何が分かってきたのかが非常に よく書かれている。

そう言えば、フレンケルは5月のサンタフェの国際会議で初めて見た のだったが、その時の印象はあまり覚えていない。 オランダ人らしい早口の英語を話していたような気がする。

講義ノートを読んでいると、ファン・デル・ワールスを生んだ国の 物理学者としての自負が伝わってくる。 誰かファン・デル・ワールスについて書かれている書物を知って いる人がいたら教えて下さい。 私にとっても、最も重要な学者の一人である。


11月27日(火)

マイク・ケイツが編集した"Soft And Fragile Matter"という本は イギリスでのサマースクールの講義ノートを集めたもので、読んで いて楽しい。 ちなみに、三重大の松山さんの話によると、ケイツはイギリスで ニュートンの次に若くして教授になった物理学者だそうだ。

この日記でも何度か書いたが、ポスドクや大学院生を対象とした アメリカやヨーロッパにおけるこのようなサマースクールや ウィンタースクールはとても充実している。 講師の顔ぶれも自国にとらわれることなく、世界各国から 最先端の研究者が集められている。

ソフトマターの分野における日本と西欧の差はこのあたりにはっきり と表れている。


11月26日(月)

朝一番で近所の病院へ行き、インフルエンザの予防注射をしてもらう。 これから年末に突入するに当たって、やはり3年前の苦い経験は二度と したくない。

大学では雑務の鉄人28号。 本を一冊購入する事務手続きが、どうしてこんなに複雑なのかしら。 都立の大学を統合して改革する前に、このあたりから改革を始めて 欲しい。


11月25日(日)

眉毛の邪頭プロデューサー、ノーマン・グランツ死去。 新聞でユダヤ人であることを知り、納得する。

朝日新聞の書評で、早速、小林よしのりの「戦争論2」(幻冬舎)を 叩いているね。 しかし、書評は基本的には中立な立場で行うべきであり、個人を 盾に使って(半分茶化しながら)攻撃するような朝日のやり方はよろしくない。 社説で堂々と批判するべきだ。 それにしても、この本がすでに42万部も売れているというのは驚くべき 数字と言えよう。

寝る前に久しぶりにキース・ジャレットの "Melody At Night With You" (ECM)を聴く。 素晴らしいの一言。


11月24日(土)

連休中日ではあるが、講義のために大学へ。 神戸での研修会に刺激され、雑談でコロイド結晶の スペース・シャトル実験の 話をする。

さて、akiko さんもケニー・バロンのライブに行ったようだ。 それはそれで大変結構なのだが、一方21日に発売された彼女 自身の"Upstream" (Verve)は残念ながら今一つである。

デビューアルバムの"Girl Talk" (Verve)がバカ売れしたため、 レコード会社が慌てて中途半端な二作目を作らせてしまったの がよくなかった。 たった7曲のうちに"Girl Talk"の未発表分を混ぜたり、同じ曲が 2曲も含まれる(ただしアレンジは異なる)など、寄せ集め的 な作品になってしまった。 デビュー作のように全体を貫くコンセプトやストーリーがないのが、 どうにも物足りない。

まあ、そうは言っても、かなりカッコイイ曲も1、2曲あるので、 今回は仕方ないとして、3作目に期待することにしよう。 とにかく、邪頭ボーカル界の大器であることは間違いないのだから、 レコード会社もじっくりと育てて欲しい。


11月23日(金)

神戸から帰京。 帰りの新幹線で、暇潰しに「立花隆先生、かなりヘンですよ」 (洋泉社)をぱらぱらと眺める。 わざわざ買うほどのものではなかった。 私に言わせれば、どちらもヘンである。

帰宅してメイルを整理していると、学生の三宅君から昨日の ケニー・バロンのライブレポートが届いている。 演奏内容は元気がなく今一つだったようで、月曜日の私の コメントは過大評価との指摘も。 いえいえ、そんなことはありません。

ところで三宅君のメイルによると、この日記が学生の間で 「じゃがしら日記」と呼ばれているそうだ。 大変困った問題なので、当面の間、このページの タイトルに読み方を加えることにした。


11月22日(木)

研修会2日目。 「借りてきた豚」も今日は少しリラックスして、いくつかコメントや 質問や差し挟む。

研修会終了後、神戸大学に行き、九工大時代の同僚に会いに行く。 電車で三宮駅に移動中、たまたま同じ電車に居合わせた宇宙論の 松田卓也先生を紹介される。 「パリティでお名前をよく存じ上げています」と言ってしまった のは、後でどう考えてもお粗末であった。

中華街で夕食。 神戸は元通りに華やかで素敵な街に復興した。


11月21日(水)

神戸のセント・キャサリンズ・カレッジにて化学物理関係 の研修会。 神戸にオックスフォード大学の施設があることを初めて知った。 山から海を見下ろす景色がすばらしい。

偉い先生ばかりの集まりだったので、こちらも様子伺いで おとなしくしていたら、夕食中に広島大学の口の悪い 先生が私のことを「借りてきた豚」のようだとか言っていた。 どういうことだろう。

夜は12時近くまでアルコール入りのインフォーマル・ミーティング。


11月20日(火)

教室協議会。夜間の講義。 明日から神戸に出張。

トミー・フラナガン死去。 私にとっては、数年前に福岡ブルーノートで見たトリオ演奏が 最初で最後であった。


11月19日(月)

午前中、研究室ゼミ。

緊急告知!! 関東地方在住の人は直ちにブルーノート東京に行って、ケニー・バロンの ピアノを聴くべし。 ただし、今週の木曜日まで。 音楽で表現し得る究極の美がそこにあるぞ!

演奏終了後、ケニー・バロンには"Night In The City" (Verve)の ジャケットにサインをしてもらって、ミーハー気分も一気に爆発。 握手してもらいながら、お互いに"Thank you ! Thank you !"と 言い合う、わけの分からない会話。 思わず骨董通りをスキップしながら表参道駅に向かう私であった。


11月18日(日)

午前中は昨日の講義のフォロー。 午後は家族で吉祥寺までドライブ。 たまたま歩いていて通りかかったディスクユニオンで、 邪頭のCDを漁っていると、愚娘が店中に響き渡る声で 「ねえお父さん、早く出ようよ」と叫ぶのが恥ずかしい。 商店街はすでにクリスマス気分だ。


11月17日(土)

午前中、化学熱力学。 相互作用と相分離。 引力と斥力がバランスする例として、 「 鴨川のアベック等間隔の法則」を説明する。 でも、鴨川が無限に長ければ、ランダウ・パイエルス不安定性によって、 周期性が壊れてしまうことも付け加えておく。

午後は今井さんと中谷さんが来訪。 研究以外の与太話が、なぜか思いっきりディープになってしまった。 最後には、日本国憲法が掲げている「政教分離」など、本質的にあり 得ないのではないかという所まで話しが及んだ(私の意見)。


1月16日(金)

Adobe Acrobat 5.0を使えばWordやPower Pointで作成したファイルを PDF化できるということを知り、早速生協に行って購入する。 便利なことは便利だが、そもそもMicrosoftのソフトがわけの分からない 形式のファイルを作るから、こういう余計な手間がかかるのだ。 それでも巷ではXPで盛り上がっているようだ。

わけあって、3年前にラッセルが"Physics Today"に書いたコロイド分散系 のレビューを読み直す。 とてもいいレビューなので、いまからでも「パリティ」で取り上げてもらえ ないかしら。


11月15日(木)

何はともあれ、学生実験が今日で終わった。 「まさに肩の荷が下りたような気分だ」というようなことを 研究室で話していたら、名前がSで始まる学生が「先生は 全然大変そうではなかった」などと言いよる。

「いや大変だった」と反論しても、「学生実験が始まる前の 予備実験の段階でも、自分の方が不安になるほど先生はお気楽だった」 と譲らない。 学生というものは、なかなかよく先生を観察しているものだと 感心した。


11月14日(水)

今日の朝日新聞で、あの「総理、総理、総理」の辻元清美が、 日本の社会構造を「リナックス化」する必要があると主張している。 この言い方には違和感がある。 リナックスの本質は合理性ではなく、むしろその芸術性にある と思うのだが。


11月13日(火)

理学部の推薦入試。 推薦入試の面接といえば、以前にいた大学での忘れられない出来事がある。

その男子高校生は何を聞かれても、「自分はすね毛が濃いので、脱毛の研究を したい」としか答えないのである。 困り果てた我々面接官は「すね毛以外に何かありませんか」と聞くと、今度は 「むだ毛がどうのこうの」と言い出したので、私はどうにも笑いを抑えることが できずに非常に苦しい思いをした。

むろんその学生は不合格であった。 都立大での話ではないので、念のために。

AKIAのPetiumマシンはRed Hat 7.2のインストールが無事に成功し、 ようやく魂が宿った。 (ちなみに、Vine 2.1.5ではネットワークカードが認識できず失敗。)

ピューロランドで愚娘に400円のタンバリンを買ってやらなかった ことは日記にも書いたが、このことを女子学生から非難される。


11月12日(月)

原因は分かっているが、朝から気分がすぐれない。 午前中、研究室ゼミ。 学生がとばっちりを受ける。 学生の物理化学実験はいよいよ最終サイクル。

午後、思いがけない電話があり、来週神戸に出張の予定が入る。 実はこの仕事、なかなか面白そうなので、特に問題なければ、 出張後に改めて日記で書くことにしよう。


11月11日(日)

NHK-BSの「心の旅」は面白かった。 歌手のさだまさしが100前に作られた自分のバイオリンの 製作者を探し出すためにイギリスを訪ねるという内容。

名前と製作者しか分からない状態で渡英したため、誤った 情報に基づいて尋ねた人が無関係と判明するなど、なかなか 決定的な情報が得られない。 ついにはグラスゴーの地元ラジオを通じて情報提供を求める あたりになると、ノリはすっかり「探偵ナイトスクープ」である。

結局、ラジオを聞いたある図書館の司書が、1930年頃の"Who's who" で当時の画家が趣味で作ったバイオリンであることを突きとめる。 その後、さだまさしはめでたく製作者のお墓の前で1曲演奏する。 NHKには珍しい行き当たりばったり的雰囲気がなかなか良かった。


11月10日(土)

午前中、化学熱力学の講義。 雨のせいか出席者がやや少ない。 内容は相互作用がある系の拡散。

AKIAのPentium 4はさすがに速いが、Linuxのインストールで やや手間取っている。


11月9日(金)

加藤先生のお知り合いのデュービン氏(Indiana-Purdue Univ.)が来訪し、 昼食を御一緒する。 その直後に重要な会議に出席し、続けてデュービン氏のセミナー。 高分子電解質と帯電コロイドの複合系の話。 状況はかなり複雑だが、チャレンジングな問題設定だと思った。 もっとゆっくりお話を聞きたかったのだが、補習授業の時間がきてしまう。 残念。

小林よしのりの「戦争論2」(幻冬舎)が出版されているので手に入れる。 1章で今回の同時多発テロについて論じているが、イスラム側の視点を 強調している部分などは的を射ていると思う。


11月8日(木)

理学部棟の3階に棲息する学生の主催で「さんまを食べる会」が催された。 脂がのったさんまは炭火で焼かれて一層おいしくなり、 私も軽く2匹を平らげてしまった。 ヨーカドーでさんまを90匹も買い占めてきた学生はご苦労様である。

ただ一つ気になったのは、先週末に来日したばかりのドイツ人のポスドクにも さんまを食べさせていたことである。 そもそもドイツ人はあまり焼魚を食べないし(食べても川魚)、腸も食べるさんま はかなり気持ち悪かったのではないかと思う。 さんまの苦味がうまい、などと言うドイツ人がいたら、私は相当驚くよ。 (後日談:本人はおいしいと言って食べていたそうだ。)

大槻ケンヂの「オーケンのめくるめく脱力旅の世界」(新潮社)終了。 全体に漂うゆるゆるとしたヌルイ雰囲気が大変よろしい。


11月7日(水)

先日、隣の研究室の助手の人と夕食を一緒にした時、文部省の新指導要領で 円周率を「3」と教えることの是非に話題が及んだ。 研究者だって円周率は「3」として概算するわけだし、 このことだけについて言えば、私自身は大した問題ではないと思っている。 むしろ「3.14」に絶対的な意味を持たせる今の教育の方がおかしい。

どうやら私と似たことを考える人はいるようで、同じ話題を扱った「数学セミナー」 (2001年1月号)の記事を、助手の人が覚えていてわざわざ持ってきてくれた。 さっと目を通してみると、円周率は「3に近い」と教える架空の国が登場し、 筆者が訪問するという設定になっている。 その国では円周率をBと書くそうだ。 このような教育の結果として、生徒はむしろ円周率について多面的に考える ようになる、というのが内容のあらまし。 日本もこうなればよいのだが。


11月6日(火)

先日、サンリオ・ピューロランドを批判する文章を書いたら、 同じ世代の子供をもつ研究者から賛同のメイルをいただいた。 因みに私はこの方から先週、密度汎関数法について教えていただいた。

夜、仕事が終わってから自宅に電話すると、愚娘が「ピューロランドに また行きたい」と言っていた。 「どこか別の所にしよう」と返事すると、「じゃあ、ディズニーランド がいい」などと言う。 一体、誰がこんなことを吹き込んでいるのだろうか? 愚娘がますます愚かになっていく。


11月5日(月)

午前中、研究室ゼミ。 午後は新しく届いたAKIAのパソコンを広げ、古いパソコンを 仏壇にする。 搭載されていたWindows2000は予想以上に間抜けで、ネットワークさえ まともにつながらない。 即座に学生に消去させる。 どうせXPもこのレベルだろう。

深夜にテレビ朝日の番組でakikoがインタビューされていた。 誰か見た人はいるかな。


11月4日(日)

多摩センターにあるサンリオ・ピューロランドに家族で行く。 本来、愚娘は幼稚園の遠足で行くはずだったのだが、たまたまその 時に病欠したため、本人が行きたかったのはもちろん、 親もいつかは連れて行ってやろうと思っていたのだ。

しかし実際に半日過ごしてみて、こういう場所は子供の教育に 極めて良くないと感じた。 例えば、ステージでは子供も参加できる短いショーがいくつか 行われているのだが、そのたびに子供に何かを買わせる仕組みに なっている。 我が家では400円のタンバリンを買わせなかったので、愚娘は 「キティーの誕生パーティー」に参加できず、そのショーの始めから 終わりまで大泣きであった。

本来、金を使わなくても遊べるような工夫をもっと子供にさせる べきなのに、全てが金で解決する世界になっている。 しかも他人との差別化によって子供に劣等感を持たせ、親にも いやらしいプレッシャーを与えるやり方が気に入らない。 後味の悪い休日であった。


11月3日(土)

家族で都立祭に行く。 焼きそば、豚の角煮、綿菓子、餃子、ホットドッグ、団子。 美術部、邪頭研、人形劇、ヘリウム風船、草木染め、フラーレン。

化学科の学生がやっているはずの、肝心のコロッケ屋が見つから なかったのが残念。


11月2日(金)

午後から来客。 密度汎関数法についてじっくりと教授していただく。


11月1日(木)

大学際が始まったのは結構なのだが、その間、生協の食堂が閉店して しまうのは困る。 仕方なくお昼は大学のふもとにあるコンビニまで歩いて行ったものの、 帰りの昇り坂で疲れてしまう。 明日からは学生の模擬店で焼きそばでも買って、大学際に協力しろ ということだろう。

その他、日記に書けないこと二つあり。


過去の日記:
2001年 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月

1998年12月〜2000年3月: 不安なイスラエル日記


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